国内のワイナリーで一番有名なところはどこかと聞かれたらほとんどの人は山梨と答えるのではないだろうか。国税庁の同一基準で比較できる最新データでは、2025年1月1日時点で全国のワイナリーは519場。1位はたしかに山梨県だ。ワイナリー数は85場。次いで2位は長野で81場。長野はまだ「ワイナリー数日本一」とは公式には言えないが、山梨を追い越す最前線にいる。ちなみに3位は北海道で69場、4位は山形で24場。
長野県の把握している数としては、2025年6月で90場とも言われているので「今、長野が一番」という人もいる。とはいえ生産量では山梨には及ばないことは付け加えておく。しかしとにかく、長野のワイナリー業界は活況だ。
長野ワイナリーの特徴は標高と地域差が大きいこと、これに尽きる。桔梗ヶ原・千曲川・日本アルプス・天竜川・八ヶ岳西麓の五つのワインバレーに分けて産地形成を進めており、 標高、気温、降水量、土壌が地域ごとに異なるため、「長野ワインはこの味」と一つに括れない多様性があることは個性であり、魅力だ。山梨を象徴するのは「甲州」だが、長野はメルロー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・フラン、ピノ・ノワールといった欧州系品種に存在感がある。比較的、赤の印象が強い。
ではなぜ長野ワインは勢いづいているのか。高標高、昼夜の寒暖差、比較的少ない降水量、水はけのよい土地が挙がる。また、果実酒の製造免許には年間6,000リットル以上の製造見込みが必要だが、構造改革特区(いわゆるワイン特区!)では基準が2,000リットルまで緩和される。これにより長野では多数の市町村がワイン特区に認定され、小規模な新規参入がしやすくなった。また、東御市の「千曲川ワインアカデミー」では栽培・醸造・経営を学ぶことができ、全国からの集客において成果を出してる。同市の「アルカンヴィーニュ」は、自社ワインを造る一方で、新規就農者などの委託醸造を引き受けながら千曲川ワインアカデミーで学んだ人が、 栽培開始、委託醸造、自社ブランド販売 、ワイナリー設立と進むための、いわばインキュベーション機能を持っている。
さらに行政は長野県は2013年に「信州ワインバレー構想」を策定し、2025年には単純な量の拡大から、国際的評価に耐えうる品質とプレミアム化へ軸足を移したが、第三者からの品質評価も追いついてきており、追い風が吹いている。ちなみに日本ワインコンクール2024では、金賞36銘柄のうち長野県産が11銘柄獲得している。
ワイナリー数なら、長野がまもなく1位になるのだろう。次の10年、長野は日本ワインを牽引する中心地の一つになる。かつて「教育県」と呼ばれた長野は「ワイン県」とも呼ばれるのだろう。しかし、一県が君臨するのではなく、山梨・長野・北海道が異なる価値を競う時代になると予想する。
長野で増えているのは、ワイナリーだけではなく、自ら畑を耕し、収穫したブドウの醸造を先行するワイナリーに託す、小さなつくり手たちだ。統計上はまだ一つのワイナリーとして数えられない彼らも、長野ワインの次の10年をつくり始めている。
強い日差しの中、千曲川ワインデイズには、県内12市町村から40以上のワイナリーが集まった。
(出典データ:令和8年3月 国税庁課税部酒税課 酒類製造業及び酒類卸売業の概況)
